過敏性腸症候群(IBS)の鍼灸治療

機能性消化器疾患(FGID)の一つに機能性腸疾患があり、その代表的なものとして過敏性腸症候群(IBS)があります。IBSの診断基準(ROMEⅢ)では、IBSの定義を以下に定めています。

6か月以上前から症状があり、最近3か月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上が当てはまる
①排便によって症状が軽減する
②発症時に排便頻度の変化がある
③発症時に便形状(外観)の変化がある

タイプとしては便秘型、下痢型、混合型に分類されますが、鍼灸治療でお越しになる方の中には便の症状に伴って起こるガスの症状に大変お困りの方も多くいらっしゃいます。

IBSおよびガスだまりなどの腹痛の要因には、脳腸相関(脳と消化管の機能的な関連)、腸内フローラ(腸内細菌による腸内環境)、粘膜炎症(免疫異常)などの関与が考えられます。また脳腸相関のことで言えば、ストレスからくる神経伝達物質(セロトニン)や内分泌ホルモン(副腎皮質ホルモン放出ホルモン:CRH)の分泌異常が大腸の運動に影響を与えています。抗不安薬が処方されるのもこのためと考えます。

鍼灸治療では、内臓活動を司る自律神経の調整と、大腸運動の調整、また患者様の陰陽虚実のバランスを整える目的で、鍼灸やレーザーなどを使用することにより改善を図ります。陰陽虚実は東洋医学の診方となります。症状の限局した部位のみならず、生活背景から起こりうる体質にも目を向け、症状の改善と再発防止を図ります。

また、症状の長期化は精神的な不安とネガティブな心を生み、内臓知覚の閾値を低下など悪循環となります。

東洋医学は目に見えないもの(気の巡り、血の巡り、津液の巡り)に対して、身体に出されるシグナル(脈の状態、舌の状態、腹の状態…)から何が不足し何が滞っているのかなどを察知し、そのバランスを整えることで本来あるべき身体の状態に持っていくことを考えて治療をしていきます。
特にIBSには腸の機能性が問題となり、そこには心因的な要素も加わることで悪化や慢性化を引き起こすため、身体のバランスを整えることも必要なことと考えます。